卵巣腫瘍について
卵巣にできる腫瘍の9割以上が良性の腫瘍です。
卵巣は子宮の両側にひとつずつあり、定期的に女性ホルモンの分泌と排卵を起こし、一定のリズムで女性の体を健康に保っています。腫瘍には良性と悪性があり、卵巣の場合、悪性腫瘍を「卵巣がん」といいます。しかし実際には卵巣の腫瘍の9割以上が良性腫瘍といわれています。
卵巣にできる良性腫瘍の中でも、最も多いのが「卵巣のう腫」です。
卵巣のう腫は、のう腫の内容物によって分類されます。
皮様のう腫(奇形腫) | 髪の毛や歯、骨、皮膚などが含まれているもの |
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チョコレートのう腫 | 子宮内膜症が原因となり、子宮内膜の組織や血液が溜まって、変色してチョコレート色になっているもの |
漿液性のう腺腫 | 卵巣の表面を覆う上皮から発生し、中にサラッとした液体が溜まったもの |
ムチン性のう腺腫 | ゼラチンのような粘液が溜まったもの |
等、いろいろな種類があります。「卵巣のう腫」は若い方にも多く、10代から更年期以降まで幅広い女性に注意が必要です。
卵巣腫瘍の症状
卵巣腫瘍ができてもほとんど自覚症状がありませんが、医師の内診や超音波検査によりその存在が判明します。
検診や別の病気の検査で、偶然、卵巣腫瘍が見つかるケースも少なくありません。しかし、以下の症状が現れて、診断されることもあります。
- 下腹部が膨らんできた
- 下腹部に違和感を感じる
- 腹壁が引きつられるような感じがある
- 腹痛がある
- 突然の下腹部の激しい痛み
- 痛みによるショック状態
- 腰痛がある
- 嘔吐
特に卵巣腫瘍が根元からねじれるといった茎捻転を起こしてしまった場合は、ねじれた部位から血行が途絶え、卵巣の細胞が壊死してしまうため、緊急手術が必要です。
卵巣腫瘍の危険性
卵巣腫瘍は痛みも症状もほとんどないために、発見が遅れる場合があります。
しかし、卵巣腫瘍には悪性の場合もあります。定期的な婦人科検診をおすすめします。
卵巣腫瘍の治療法
卵巣腫瘍の根本的な治療方法は手術です。
どの時点で手術をするか、どういう方法で手術をおこなうかを考える必要があります。
経過観察
一般的に2~3cm大であれば、定期的な超音波検査で経過を観察。5~6cm大になると、悪性の危険性が出てくるので、手術を考える必要があります。
手術方法
以前は開腹手術が中心でしたが、術後に目立つ痕が残ってしまうため、現在は、腹腔鏡で卵巣を摘出したり、腫瘍の部分だけを摘出する手術をおこなうことが多くなっています。 この方法は、腹部に2~3カ所小さな切開をおこなうことで、内部を確認しながら電気メスやレーザーで病変を焼いたり、周囲の臓器との癒着をはがすことも可能です。 開腹手術と比較すると、傷が小さく体の負担も少ないため、4~5日の入院で回復も早い、といった利点があります。ただし、状態によっては、開腹手術が避けられない場合がありますので、医師との相談が必要です。
摘出部位
卵巣腫瘍の部分切除か卵巣の全摘出かは、年齢や妊娠のご希望等によっても変わります。
妊娠は、卵巣がひとつあれば可能ですが、若い方については、できるだけ卵巣をそのまま残し、腫瘍の部分だけを摘出します。
50歳以上の方の場合、再発防止のために、希望に応じて全摘出をすることもあります。 しかし、閉経前の場合は、術後に更年期と同じような症状が出る場合があるので注意が必要です。