ベセスダシステムとは?
子宮頚がんの検査結果は、これまでクラス分類Ⅰ~Ⅴの5段階で表わしていました。
このクラス分類は、患者さんへ検査結果をお伝えするには、非常にわかりやすく、便利でしたが、微妙な異常を分類し切れず、診断の見落としにつながることもありました。
従来のクラス分類の問題点
- 細胞所見や形態学的所見は示されておらず、臨床的判断基準を示しただけである
- 標本が不良(不適正)で、細胞診断が困難な場合でも無理に診断していた
- 腫瘍性病変かどうか判定が難しい場合の診断が困難である
- ヒトパピローマウイルス(HPV)関与のエビデンスが取り入れられていない
そこで、従来のクラス分類に代わる子宮頸がんの新しい細胞診報告様式として、国際分類である「ベセスダシステム」に基づいた分類が推奨されるようになりました。
ベセスダシステムのメリット
1.子宮頸部細胞診についての分類
2.ヒトパピローマウイルス(HPV)関与のエビデンスが取り入れられている
3.クラス分類ではなく推定病変を一定の基準で記載
4.標本(検体)の適否(適正もしくは不適正)を明確に表す
ベセスダシステムに基づいた分類は次のようになっています。
注釈
NILM(クラスⅠ・Ⅱ)=正常な細胞のみ
ASC-US(クラスⅡ・Ⅲa)=異形成と言い切れないけれど細胞に変化がある
ASC-H(クラスⅢa・Ⅲb)=高度な細胞異型の可能性がある
LSIL(クラスⅢa)=HPV感染や軽度異形成と考えられる
HSIL(クラスⅢa・Ⅲb・Ⅳ)=中等度異形成・高度異形成・上皮内癌と考えられる
SCC(クラスⅣ・Ⅴ)=明らかな扁平上皮がんと考えられる
ベセスダ分類による細胞診結果の取り扱い
検査結果に対する対応は、
- NILM→定期検診を続ける
- ASC-US→HPV検査をして「陰性」なら1年後細胞診、「陽性」ならコルポ診、生検
- ASC-H・LSIL→コルポ診、生検
- HSIL→コルポ診、生検
- SCC→コルポ診、生検
これによると、明らかに「正常の場合」とASC-USでHPV検査をして「陰性」の場合を除き、コルポ診と生検(組織診)いう精密検査が必要になります。当院では患者さんに十分説明したうえで、コルポ診と生検(組織診)をおこなっています。
コルポ診とは、子宮の入り口付近を拡大して観察する診断方法です。
診断結果により、病変の一部を採取して「組織診」をおこないます。組織診から単純な炎症なのか、異形成なのか、異形成の場合どのレベルにあるのか、といったことをより詳しく診断します。
適正標本の基準
適正標本の基準
標本の種類 | 従来直接塗抹法 | 液状処理細胞診法 |
---|---|---|
塗抹される必要最低 扁平上皮細胞数 |
保存状態が良く鮮明に見える細胞数 | |
8,000~12,000個以上 | 5,000個以上 | |
子宮内頸部/移行体細胞数 適正条件ではないが有無の記載が必要 |
子宮内頸部または扁平上皮化生細胞が孤立性もしくは集塊として10個以上出現していること |
標本の種類 | 従来直接塗抹法 | 液状処理細胞診法 |
---|---|---|
不明瞭要因 | 扁平上皮細胞の75%以上が不明瞭である場合は不適正と判断する 炎症細胞、出血により覆われていないか確認 過度な乾燥によるアーチファクトの有無の確認 扁平上皮細胞の50~75%が不明瞭である場合、「適正」という記載に続き部分的に不明瞭であることを記載 |